品種改良、2~3年に短縮
植物ゲノムセンター(茨城県つくば市、美濃部侑三社長)はイネの病気に対する耐性や収穫量などを左右する遺伝子を解析するバイオベンチャーだ。2000年に設立したばかりの若い会社だが、遺伝子解析の技術を使い品種改良した種子を全国三十箇所以上の農業生産法人などに提供する。
同社の強みは、従来十年かかっていた品種改良をわずか二、三年で行えるスピード。遺伝子解析の結果などから特徴のある優良品種を選抜しピンポイントで交配を行う。日本の品種だけではなく、台湾や中国といった海外の品種も含めて遺伝子を解析するため、これまで難しかった開花時期の調整をつかさどる遺伝子の特定にも成功した。
病気や寒さに強いといった特質をもつ遺伝子をつき止めて特許化し、種苗会社や農業資源メーカーにライセンスを供与。開発したコシヒカリの新品種は、イネの病気でもあるいもち病への耐性を付与したほか、丈が短く風雨などによる倒伏にも強い特徴を持つ。同様の特徴を持ったイネの欠点だった食味の問題も食味遺伝子の特定で解決。日本穀物検定協会(東京・中央)が実施する食味ランキングで最高ランクの「特A」評価も受け、作付面積が全国で増え続けている。
イネがもつ約三万個の遺伝子機能を解析することは、小麦など他の作物の品種改良にも役立つとされている。美濃部社長は「アグリバイオの技術で国際市場へ参入することが当面の目標」と自信を見せる。
ただ、植物関連のバイオ事業では米国企業が先行しており、世界の中での日本市場の割合はわずか0.1%程度。さらに、海外では、イネは国力を上げる「戦略兵器」の位置づけで、開発競争も猛烈な速さで進んでいるという。
ある意味で「早い者勝ち」的な要素が強い遺伝子分野。育種や品種改良、有用な特質を持つ遺伝子の特定など、バイオ事業の飛躍のカギを握るポイントは多々あるが、なにより開発スピードをさらに高めていくことが世界との競争に打ち勝つ課題になる。
日経産業新聞 2009年1月30日